中     国 1 感染症の流行状況 中国では、赤痢などの感染症や、腸炎ビブリオやサルモネラなどの食中毒、あるいは肝炎、寄生虫疾患が数多く発生しています。 次のような病気がみられます。 消化器系疾患 ○細菌性赤痢、アメーバ赤痢 ○食中毒 ○寄生虫疾患 ○ランブル鞭毛虫症 ○A型肝炎 ○コレラ ○腸チフス、パラチフス 虫が媒介する病気 ○マラリア ○デング熱 ○日本脳炎      その他の疾患 ○狂犬病 ○破傷風 ○エイズ ○B型肝炎     中国の気候は国土が広大であるため気候も東西南北でまったく異なります。しかし、中国奥地(チベット自治区や新彊ウイグル自治区など)を除けば基本的には温帯気候になります。そのため北京や上海の大都市を含んだ中国全域では4〜9月の春から初秋にかけて赤痢や食中毒などの消化器系感染症とA型肝炎が発生しています。その他、破傷風や狂犬病などの感染症が発生しますが、特に季節的な変化はありません。 香港に近い広州は一年を通して気温が高いために消化器系感染症とA型肝炎が発生しており、破傷風、性病、狂犬病、寄生虫疾患も季節にかかわらず発生していますが、これらの感染症の発生は地方に多く、大都市での発生報告はありません。また、中国南部の広州からベトナム国境に及ぶ地域では、熱帯・亜熱帯地域特有の感染症であるマラリアやデング熱が発生しますが、流行地域が限られていますので、この地域に行かれる方以外は心配する必要はありません。 ◎1999年、全国の空港検疫所で中国から帰国した旅行者1名から赤痢菌、14名から食中毒菌、1名からマラリアが検出されています。また、2000年の感染症発生動向調査によると国内で中国から帰国した旅行者から赤痢患者30名、腸チフス患者1名、パラチフス患者1名、A型肝炎患者2名が報告されています(国立感染症研究所:感染症週報より)。 2 中国での病気の予防方法 様々な感染症や風土病がありますが、都市で観光しているだけであれば、食事や飲み物に注意し体調を整えておくだけでも、かなり病気の予防ができます。旅行に出かけると、どうしても疲れや飲み過ぎ食べ過ぎで知らない間に抵抗力が落ちてしまいます。このような場合、体に病原体が入ると簡単に病気になってしまいます。 そこで病気を予防する上で注意が必要な食べ物と行動を紹介します。 1 注意したい食べ物 ◎生 野 菜: 市場や屋台などで蠅がたかっているようなものは避けてください。赤痢、食中毒や寄生虫に感染する危険があります。 ◎生 も の: 日本の食習慣と同じように刺身・生貝などの生ものを食べるのは、衛生状態の悪い食堂や屋台では無論のこと、一流レストランや高級ホテルであっても油断できません。特に4月から9月にかけては、赤痢、食中毒、A型肝炎に感染する危険が大きいので注意が必要です。もともと中国料理は生の物を食べることはありません。『郷に入っては郷に従え』の格言のように料理を楽しんでください。 ◎生 水・氷: 水道の設備はありますが、中国の水はかなりの硬水で軟質の水に慣れた日本人は下痢を起こすことがよくあります。また、地方では病原体や肝炎ウイルスに汚染されやすいので生水は避けてください。水が飲みたい人はミネラルウォーターやボイルドウォーターを購入してください。また、氷は生水から作られることが多いのでなるべく取らないこと。ウィスキーなどと一緒でも消毒効果はありません。 2 注意したいこと ◎野    犬 : 中国では、狂犬病ウイルスを持った犬がいますので、よだれを流している犬には近寄らないようにしましょう。また、野犬などの動物にかまれたら、すぐに信頼できる病院で、狂犬病発病予防のためのワクチンを接種しましょう。 *余談ですが中国の大気汚染はかなり悪く、大陸性気候と相まって、風邪をひいたり、喉などの呼吸器を痛める人がいます。外出した後は手洗いやうがいなどを忘れずに。(イソジンなどのうがい液を持参すると良いでしょう) 3 予防接種  旅行経路(出発国)によっては、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また、地方への旅行や長期滞在の場合には、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎などの予防接種が勧められます。予防接種は、これまでの予防接種歴、滞在期間、旅行形態、出発までの期間でかわりますので、詳しいことはお近くの検疫所に問い合わせてください。 4 マラリア情報( WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 2001) 熱帯熱マラリアは海南省、雲南省に存在します。 三日熱マラリアは、福建省、広東省、広西省、貴州省、海南省、四川省、ウイグル自治区(イリ川渓谷沿いのみ)、チベット自治区(南東部のヤルツァンボ川沿いのみ)、雲南省に存在しています。また、安微省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、上海、鎮江ではまれに見られます。 感染が起きるのは標高1500m以下で、流行の季節は北緯33度以北の地方で7月〜11月、北緯33度〜25度で5月〜12月、北緯25度以南で一年中です。 予防薬としては、海南省と雲南省ではメフロキン(Mefloquine)[商品名はラリアン(Lariam)、メファキン(Mephaquin)]が、その他の地域ではクロロキン[商品名はアラレン(Aralen)、アブロクロール(Avloclor)、 ニバキン(Nivaquine)、レゾシン(Resochin)]が有効です。ただし、服用については副作用などに注意が必要です。 海外保健医療情報  1 病気になった時 (1)処置  中国は広大な国で流行する感染症も地域によってまったく異なることがあります。一般の旅行者が行く地域では、それほど多くの感染症があるわけではありません。注意しなければならないのは、赤痢、腸チフス、食中毒などの消化器系の感染症やウイルス性肝炎、寄生虫疾患などです。この他にもマラリアをはじめ様々な感染症がありますが、地域が限られているため、一般の人への影響はほとんどありません。  しかし抗生剤の乱用などの素人療法で逆に治療が遅れ、取り返しがつかなくなる危険があります。一時的に日本より持参した市販薬を使用するのは差し支えありませんが、体調に異常がある方は速やかに現地の病院を受診してください。 (2)中国国内の医療機関  中国の医療機関は、都市の一部では比較的良いとされていますが、地方ではあまり期待できません。診察料金は、地方では比較的安いですが、外国人を相手にする都市の病院では、かなり高額になることがありますので注意してください。  また、日本的なサ−ビスを期待するとトラブルとなります。  以下、日本人旅行者が利用しやすい病院を紹介します。  北京の病院 (病院=医院) 中日友好病院: 私立総合病院 (TEL 64229-1122)外国受付24時間 (TEL 6422-2952)住所:北三環和平里北東側 北京協和病院「日本人健診センター」: 私立総合病院 (TEL 010-529-5262 直通、日本語) 住所:東単北街西側 上海の病院 華東病院: 全科診療  住所:延安東未知221号  (TEL 256-3180) 広州の病院 中山医科大学第一付属医院外賓診室 (外国人外来): 全科診療 (TEL 77-8223 内線 3231) 広州第一人民医院外賓診室(外国人外来): 全科診療 (TEL 33-3090) 大連の病院 大連市中心医院日本人医療相談室(大連市中心医院、外賓医院内): 一般診療(TEL 411-4413012 大連市中心医院事務所経由) 参 考 在中華人民共和国日本大使館: Embassy of Japan,7 Ri Tan Road, Jian Guo Men Wai, Beijing, People's Republic of China. (北京市建国門外日壇路7号) TEL(86-10)6532-2361 http://www.japan.org.cn/ (中・日) 在上海日本総領事館: Consulate-General of Japan, 8 Wan Shan Road, Shanghai, People's Republic of China. (上海市万山路8号) TEL (86-21)6278-0788 http://www.japan.org.cn/shanghai/ (日・中) 在広州日本総領事館: Consulate-General of Japan, Garden Tower, 368 Huanshi Dong Lu, Guangzhou, People's Republic of China. (広州市環市東路368号花園大厦) TEL (86-20)8334-3009,8334-3090(領事・査証班) http://www.japan.org.cn/gzindex.html/ (中・日) 在藩陽日本総領事館: Consulate-General of Japan, 50 Shisi Wei Lu, He ping Qu Shenyang, Liaoning, People's Republic of China. (遼寧省瀋陽市和平区十四緯路50号) TEL (86-24)23227490 http://www.japan.org.cn/syindex.html/ (中) 北京 警 察: 局番なし110 消 防: 局番なし119 救 急: 601-4433 上海 警 察: 局番なし110 消 防: 局番なし119 救 急: 120 広州 警 察: 局番なし110 消 防: 局番なし119 救 急: 120 瀋陽 警 察: 局番なし110 消 防: 局番なし119 救 急: 120 大連 警 察: 局番なし110 消 防: 局番なし119 救 急: 120 2 帰ってからの過ごし方  帰国して最初に受けるのは検疫です。滞在先で下痢、腹痛、発熱など体に異常があれば健康相談室で相談してください。赤痢やコレラでも軽い症状ですんでしまうことが多いのですが、感染力は思ったより強いので、自分で大丈夫と思っていても家族や会社の人に感染することもありますので・・・。  また、潜伏期間といって感染してから一定の期間がたたないと発病しない病気が数多くあります。検疫時は何ともなかったのに数日してから症状が出ることがあり、その時(症状が出た時)には、速やかに医師の診察を受けましょう。診察を受ける際には滞在した国と期間、蚊やノミ、ダニに刺されていたらそのことや、食べたものについても説明されると診断の役に立ちます。 帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001