東アジア地域へ旅行される方へ 韓国、中国、台湾、香港 東アジアは日本との距離も近く気候風土も似ているため、都市部や観光地は、比較的安全に旅行できる地域です。しかし、広い中国大陸ではマラリアが発生する南部から、中央アジアに続く砂漠地帯、シベリアに続く東北部など様々な気候・自然条件もあり思いもよらぬ感染症も発生しています。また、地震や洪水などの自然災害の発生も多く、これらの災害後に様々な感染症が流行することも大きな問題です。東アジアで問題となる感染症には次のようなものがあります。 水や食べ物が原因となる病気は多くの地域で発生しています  食中毒などの下痢症、E型肝炎(中国西部)、肺吸虫・肝吸虫などの寄生虫症、コレラ、赤痢、腸チフスなど  虫によって媒介される病気     マラリア(中国南部、韓国・北朝鮮国境地帯)、ペスト(中国奥地、モンゴル)、ツツガムシ病、リーシュマニア症、腎症候性出血熱などのウイルス性出血熱、日本脳炎など  その他      B型肝炎、住血吸虫症(揚子江中流域)、流行性髄膜炎(モンゴル)、トラコーマ、レプトスピラ症(中国)など   ◎1999年、全国の空港検疫所で東アジアから帰国した旅行者3名から赤痢菌、57名から食中毒菌、1名からマラリアが検出されています。また、1998年の国内の全国統計では、東アジアで感染したコレラ患者3名、赤痢患者24名、アメーバ赤痢患者1名、腸チフス患者1名が報告されています。 以下、東アジア地域を旅行される場合の注意事項を紹介します。 ★気候に注意  感染症や食中毒の流行時期は、日本とほぼ同じで6〜9月の暑い時期にかけて発生が多く、10〜5月のすずしい時期の発生は比較的少なくなっています。また、蚊が発生しやすい時期には、南部の農村部では、蚊で媒介されるマラリアに感染する危険がありますので注意してください。 ★病気の知識を持って予防を。あとは体調を整えて。  様々な感染症がありますが、都市やリゾート地の観光程度であれば体調を整えておくだけでも、かなりの病気が予防できます。旅先では、どうしても飲み過ぎ、食べ過ぎ、旅の疲れなどで気付かない間に体の抵抗力が落ちてしまいがちです。このような場合、体に病原体が入ると簡単に病気になってしまいます。そこで感染症にかかりやすい『食べ物』について説明します。 ◎生野菜・果実: 皮のあるフルーツは一般に安全な食べ物と考えられます。できるだけむきたてを食べるように心がけましょう。生野菜は、家庭料理や一流レストラン以外は避けるのが無難です。安全と思われる場所でも日本より各種寄生虫などに罹患する可能性が高いことは常に考えておきましょう。 ◎刺身・生カキ: 日本での食習慣と同じような感覚で安易に生ものを食べることは、たとえ一流レストランや高級ホテルでも注意が必要です。アメーバ赤痢や腸炎ビブリオなどの食中毒菌に感染する恐れがあります。また、川魚を生で食べると肝吸虫や顎口虫などの寄生虫に感染する危険があります。 ◎生 水 ・ 氷: 都市では水道の設備は整っており、たいていの国では飲むことができるようです。しかし、日本と違い硬質の水であることから、軟水に慣れた日本人では一過性の下痢を起こすことがあります。また、極めてまれですが、細菌に汚染されていることがありますので、生水は避けミネラルウォターを飲むようにしましょう。また、氷からの感染の危険性はほとんどありませんが、生水から作られることは覚えておいてください。 ★予防接種について 短期間の都市部、リゾート地のみの滞在ではとくに旅行のための予防接種の必要性は高くありません。地方への旅行、長期滞在の場合は、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎などの予防接種が勧められ、状況によりB型肝炎の接種を考慮します。 ★注意したいこと ◎野   犬: 狂犬病が完全に撲滅されている国は、世界でもごくわずかです。東アジアでも狂犬病は存在しています。狂犬病は、ウイルスを持った犬に噛まれることで感染し、治療が遅れると死に至る病気ですので、よだれをダラダラ流している犬には近寄らないよう注意しましょう。万一、噛まれたら、すみやかに病院で狂犬病ワクチンを接種しましょう。  楽しい旅行を満喫するために、旅先での飲み水や食べ物などに注意することは、大事なことですが、旅先で、お腹の調子が悪いとか、下痢が続く時には現地の医師に相談してください。 帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001