ベ ト ナ ム 1 感染症の流行状況 ベトナムでは、コレラ、赤痢、腸チフスや肝炎などがよくみられます。マラリア、デング熱、日本脳炎など蚊によって感染する病気も発生します。 ベトナムでは次のような病気がみられます。 食べ物・水から感染する病気 ○細菌性赤痢、アメーバ赤痢 ○A型・E型肝炎 ○コレラ ○食中毒 ○寄生虫疾患 ○腸チフス、パラチフス 虫が媒介する病気 ○マラリア ○デング熱 ○日本脳炎 ○ペスト ○リーシュマニア症 ○フィラリア症 その他の疾患 ○B型肝炎 ○ポリオ(メコンデルタ) ○狂犬病 ○エイズ ○破傷風   ベトナムの気候は、亜熱帯モンスーン気候に属しているため、四季がありますが南北に長い国土のために北部のハノイ市と南部のホ−チミン市では、若干差があります。北部ベトナムは、4月は短い春、5〜10月が夏、11〜12月が秋、1〜3月が冬で10℃近くまで気温が下がります。感染症は、4〜10月の気温の高い時期にコレラ、赤痢などの消化器系感染症やA型肝炎が流行します。マラリアやデング熱もほぼ同時期に流行します。この他、破傷風、狂犬病、性病、ペスト、寄生虫疾患は一年を通して発生があります。一方、南部ベトナムは四季がなく、5〜10月が雨季、11〜4月が乾季で、感染症は一年を通して流行しますが、雨季に多発する傾向が見られます。 ◎1999年、全国の空港検疫所でベトナムから帰国した旅行者12名から赤痢菌が検出され、食中毒菌も173名検出されています。また、2000年の感染症発生動向調査によると国内でベトナムから帰国した旅行者から赤痢患者25名、A型肝炎患者2名が報告されています(国立感染症研究所:感染症週報より)。 2 ベトナムでの病気の予防方法 ベトナムには様々な感染症や風土病がありますが、都市やリゾートで観光しているだけならA型肝炎や赤痢、食中毒などの経口感染症が主ですので、食べ物や飲み物に注意し、体調を整えておくだけでかなり病気が予防できます。ただ、旅行に出かけると、どうしても疲れや飲み過ぎ、食べ過ぎで知らない間に抵抗力が落ちてしまいます。 そこで病気を予防する上で注意が必要な食べ物を紹介します。 1. 注意したい食べ物 ◎生 野 菜: 市場や屋台で蠅がたかっているようなものは避けてください。赤痢、食中毒の心配があります。また、各種の素麺に葉野菜をのせて食べますが、木の葉によく寄生虫がいます ◎乳 製 品: ヨーグルト・アイスクリームなどの乳製品には細菌が発育しやすい成分が多く入っており、衛生状態の悪い店のものは要注意です。運が悪ければ赤痢や食中毒菌に感染する恐れがあります。 ◎生 も の: 日本の食習慣をそのままに、刺身や寿司などを食べるのは、例え一流レストランや高級ホテルであっても油断できません。新鮮に見えても食中毒菌やコレラに感染することがあります。また、川魚も生食だと寄生虫に感染することがあります。 ◎生 水・氷: 都市では一応、水道の設備はありますが一般に硬水のため軟水になれた日本人は下痢を起こしやすく、また、病原菌や肝炎ウイルスに汚染されやすいので生水は飲まないようにしましょう。地方では井戸水に頼っている所が多いので全く飲用には適していません。水が飲みたい時はミネラルウォーターかボイルドウォーターにしましょう。また、氷は生水から作られることが多いのでなるべく取らないこと。ウィスキーなどと一緒でも消毒効果はありません。 2 注意したいこと ◎水 遊 び: ベトナムの河川には、色々な寄生虫が存在しています。皮膚から侵入するメコン住血吸虫はメコン川流域に分布しています。感染すると肝機能障害などを起こし重症になると死亡する事もある寄生虫です。 ◎蚊に注意 : マラリアもデング熱は蚊によって媒介されるので、蚊を防ぐことが重要な予防方法になります。これらの感染症の流行する地域に出掛ける際には、防虫スプレーや蚊取り線香の準備の他に、肌を露出しない服装をすることが重要な予防策となります。この他、蚊は様々な病原体を媒介する厄介な昆虫であることを忘れずに・・・。 3 予防接種  旅行経路(出発国)によっては、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病などの予防接種が勧められます。予防接種は、これまでの予防接種歴、滞在期間、旅行形態、出発までの期間でかわりますので、詳しいことはお近くの検疫所に問い合わせてください。 4 マラリア情報 (WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 2001) マラリア感染の危険は、都市の中心部、The Red River Delta 地帯、Nha Trang 北部の沿岸平野を除く全土にあります。感染の危険性が高い地域は、同国最南端のCa Mau県、Bac Lieu県と、北緯18度以南で標高1,500m以下の高地です。患者の大部分は熱帯熱マラリアで、ほとんどの地域の熱帯熱マラリアがクロロキン(Chloroquine)やスルファドキシン−ピリメタミン(Sulfalene-Pyrimethamine)に強い耐性を示します。予防薬としてはメフロキン(Mefloquine)が有効ですが、服用については副作用などに注意が必要です。 商品名:ラリアン(Lariam)、メファキン(Mephaquin) 海外保健医療情報 1 病気になった時 (1)処置 ベトナムは衛生状態が良くなってきてはいますが、日本と比べるとまだかなりの隔たりがあります。 発生する感染症も多く、コレラ、赤痢、腸チフス、食中毒などの消化器系感染症、A型肝炎のほか、熱帯・亜熱帯地域特有の感染症であるマラリア、デング熱、日本ではなじみのない寄生虫疾患も数多く報告されています。 このように日本にない病気もあり、抗生剤の乱用などの素人療法で逆に治療が遅れ、取り返しがつかなくなる危険があります。一時的に日本より持参した市販薬を使用するのは差し支えありませんが、体調に異常がある方は速やかに現地の病院を受診してください。 (2)ベトナム国内の医療機関 ベトナムの医療機関は海外政府援助によって運営されていますが、一般の医療機関では設備や医薬品が慢性的に不足しているのが実状です。衛生観念も高いとは言えませんので、日本と比べ不衛生な(あるいは不衛生に見える)病院も多く見られます。 全体的に医療レベルは高くありませんので、簡単な治療や応急的な処置であれば問題ありませんが、手術などを必要とする疾病や重症例では、速やかにシンガポ−ルやタイなど医療レベルの高い近隣諸国に出向くか、あるいは日本に帰国して治療することをお勧めします(海外に緊急移送する場合は個人負担となります)。  ベトナムに駐在する日本人は、外国人を優先的に診察してくれるバクマエ病院や外国の医療機関を利用することが多いようです。  医療レベルは開放政策のため、徐々に良くなっているとの情報もありますが、病気に対しては予防に勝るものはありません。 以下、ベトナムの医療機関を紹介します。 ハノイ スウェーデン診療所(Swedish Clinic): 全科 入院設備なし 住所:Van Phuc (TEL 25-2464 /時間外213555) ベトナム−ソ連病院(Viet-Xo Hospital): 国立総合病院 救急 住所:TRAN KHANH DU ST. (TEL 25-2231/25-7986) ベトナム−独病院(Viet-Duc Hospital): 国立総合病院 外科系が良い 住所:40 TRANG THI  (TEL 25-3531) ベトナム・スウェーデン小児病院: 国立病院 小児科専門 (TEL 34-3700/34-3176) バクマエ病院 : 全科 入院可 住所:Giai Phong ホーチミン チョ−ライ病院(Choray Hospital): 国立総合病院 医師の技術は高い 住所:201B NGUYEN CHI THANH St.DISTRICT 5. (TEL 55-4137/55-2197) フランス基金心臓病院  (Heart Institute Hospital): 公立総合病院 住所:520 NGUYEN TRI PHUONG,Q,10. (TEL 65-1545/65-1586) ツーズー産院(Tu Du Obstetrie Hospital): 国立総合病院 産婦人科が良い 住所:284 CONG QUYNH 1ST DISTRICT. (TEL 39-2722/39-5117) 参 考 在ベトナム日本大使館: Embassy of Japan,27 Lieu Giai Street, Ba Dinh District, Hanoi, Viet Nam. TEL (84-4)846-3000 http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/kokan/a_viet/ (日) 在ホーチミン日本総領事館: Consulate-General of Japan, 13-17 Nguyen Hue, District 1, Ho Chi Minh City, Viet Nam. TEL (84-8)8225314 ハノイ警察署: (TEL 25-4451) 警察(緊急): 局番なし 03 消防署: 局番なし 08 救急車: 局番なし 05 ベトナム観光案内: (TEL 25-5963)   2 帰ってからの過ごし方  帰国して最初に受けるのは検疫です。滞在先で下痢、腹痛、発熱など体に異常があれば健康相談室で相談してください。赤痢やコレラでも軽い症状ですんでしまうことが多いのですが、感染力は思ったより強いので、自分で大丈夫と思っていても家族や会社の人に感染することもありますので・・・・。  また、潜伏期間といって感染してから一定の期間たたないと発病しない病気が数多くあります。検疫時は何ともなかったのに数日してから症状が出ることがあり、その時(症状が出た時)には、速やかに医師の診察を受けましょう。診察を受ける際には滞在した国と期間、蚊やノミ、ダニに刺されていたらそのことや、食べたものについても説明されると診断の役に立ちます。 帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001