カ ン ボ ジ ア 1 感染症の流行状況  カンボジアでは、コレラ、赤痢、腸チフスや肝炎などがよくみられます。マラリア、デング熱、日本脳炎など蚊によって感染する病気も発生します。  カンボジアでは次のような病気がみられます。 食べ物・水から感染する病気 ○腸チフス、パラチフス ○A型・E型肝炎 ○コレラ、赤痢 ○食中毒 ○寄生虫疾患 虫が媒介する病気 ○マラリア ○デング熱 ○日本脳炎 ○フィラリア症 ○リーシュマニア症 その他の疾患 ○B型肝炎 ○ポリオ(メコンデルタ) ○狂犬病 ○エイズ ○破傷風  消化器系疾患は、年間を通して流行していますが、5〜10月の高温多湿の時期(雨季)に特に多発しています。熱帯・亜熱帯地域特有の病気であるマラリアの流行は都市部や平野部では比較的少ないようですが、低山岳地帯やタイ、ベトナムの国境付近では非常に多くなっています。ただ、マラリア患者が治療のために都市に集中しているため、都市部での流行も懸念されています。同じように蚊によって感染するデング熱は一年中流行し、都市部でも発生します。プノンペン市内からも多くの患者が報告されています。  また、結核、破傷風、ウイルス性肝炎は季節にかかわらず発生している状況です。エイズの増加やメコン川流域での寄生虫疾患(メコン住血吸虫)の流行も報告されています。 ◎1999年、全国の空港検疫所でカンボジアから帰国した旅行者1名から赤痢菌、30名から食中毒菌を検出しています。また、2000年の感染症発生動向調査によると国内でカンボジアから帰国した旅行者から赤痢患者14名、腸チフス1名、パラチフス1名、三日熱マラリアが1名が報告されています(国立感染症研究所:感染症週報より)。 2 カンボジアでの病気の予防方法  カンボジアの衛生状態は非常に悪く、長期間に渡り滞在すれば健康に充分注意していても様々な病気に感染する危険性が高いと考えてください。短期間、都市部に滞在している場合には感染の危険性のあるのは、コレラや赤痢あるいは食中毒などの消化器系疾患とデング熱ですが、消化器系疾患は体調を整えておくだけで、ある程度の病気予防は可能です。デング熱は蚊に刺されなければ感染しません。旅行に出かけると、疲れや飲み過ぎ、食べ過ぎで知らない間に抵抗力が落ちてしまい、このような場合、体に病原体が入ると簡単に病気になってしまいます。    そこで病気を予防する上で注意が必要な食べ物と行動を紹介します。 1. 注意したい食べ物 ◎生 野 菜: 市場や屋台で蠅がたかっているようなものは避けてください。赤痢、食中毒、寄生虫の心配があります。 ◎果実とジュース: カットされて出される果物はホテルやレストランでも避けるのが無難です(丸ごと自分でむいた果物はOK)。また、屋台などで切り売りされている果物やジュースはやめましょう。 ◎生 も の: 刺身・生ガキなどの生ものを食べるのは無謀な行為と言えます。一流のレストランやホテルであってもコレラや食中毒の危険があります。川魚も食べますが良く調理しないと寄生虫やコレラ、赤痢の心配があります。 ◎生 水・氷: 水道の設備はほとんどありません。そのため住民は、メコン川の水を飲んでいます。メコン川の水は、水質も悪くありませんが、病原菌や肝炎ウイルスに汚染されていることが多いため避けてください。現在この水に代わる物として外国の援助で井戸が掘られていますが、美味しくないとの理由であまり利用されていません。水が飲みたい場合は、ミネラルウォーターやボイルドウォーターを注文してください。また、氷は生水から作られることが多いのでなるべく取らないこと。ウィスキーなどと一緒でも消毒効果はありません。 (2)注意したいこと ◎水 遊 び: メコン川流域には、様々な危険な寄生虫がおりますので注意してください。この他、破傷風や他の寄生虫にも感染する危険がありますので、裸足にはならないように注意してください。 ◎蚊 に 注 意: マラリアやデング熱は蚊で感染します。マラリアを媒介するハマダラカは夜に活動し、逆にデング熱を媒介するネッタイシマカは日中に活動します。蚊に刺されないことが重要な予防方法になりますので、流行地域に出掛ける際には、蚊に刺されにくい服装をし、防虫スプレーや殺虫剤を活用してください。 3 予防接種  旅行経路(出発国)によっては、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病などの予防接種が勧められます。予防接種は、これまでの予防接種歴、滞在期間、旅行形態、出発までの期間でかわりますので、詳しいことはお近くの検疫所に問い合わせてください。 4 マラリア情報  (WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 2001) マラリアの危険は熱帯熱マラリアが主で、首都プノンペンとTonle Sap湖周辺を除く全土に年間を通して存在しています。アンコールワットの観光地にも発生があります。予防薬としてはメフロキン(Mefloquine) 商品名:ラリアン(Lariam)、メファキン(Mephaquin)、西部地方ではドキシサイクリン(Doxycycline) 商品名:ビブラマイシン(Vibramycin)の服用が有効ですが服用については副作用などに注意が必要です。 海外保健医療情報 1 病気になった時(1)処置  カンボジアは長い内戦の影響で衛生状態が非常に悪化しています。そのため国内で発生する感染症も多く、カンボジアに旅行される方は、大きな危険に身をさらさなければなりません。 実際、流行する感染症の中で旅行者が注意しなければならないのは、コレラ、赤痢、アメ−バ赤痢をはじめ、食中毒などの消化器系感染症やA型肝炎のほか、熱帯・亜熱帯地域特有の感染症であるマラリア、デング熱など広範にわたっています。 日本にない病気もあり、抗生剤の乱用などの素人療法で逆に治療が遅れ、取り返しがつかなくなる危険があります。一時的に日本より持参した市販薬を使用するのは差し支えありませんが、体調に異常がある方は速やかに現地の病院を受診してください。 (2)カンボジア国内の医療機関  カンボジアにはプノンペン市内に国立病院と各県に県立総合病院があるが、長期間にわたる内戦の影響で設備は老朽化し、医師も少なくなっており、医療機関のレベルは日本や他の東南アジア先進国と比較してもかなり差があります。そのため簡単な応急処置のような治療は可能ですが、医薬品や医療機材が不足がちなために完全な治療は望めません。れっきとした国立病院でさえ、出産するために、食料、医薬品、医療器材すべてを持ち込まなければならないような状況です。 緊急を要する疾患や重症疾患では近隣の医療先進国(タイ、マレ−シア、シンガポ−ルなど)に移送しなければなりません。この際の移送費は個人負担になる場合が多いので、できれば海外旅行傷害保険に加入したほうが良いでしょう。 医薬品に関しては、薬局、準薬局が全国で200〜300店舗が開設されていますが、薬品の製造設備が少ないこと、薬品保管などの監視体制が不完全であることから、信用できる薬の購入は不可能に近いのが現状です。もちろん、外国の援助によって、輸入品もありますが、よほど信頼のおける薬局でないと安心して使うことができません。旅行者自身で使用するのであれば日本から持参するのが一番です。 以下、カンボジアにある病院をいくつかあげます。電話や住所など詳細につきましては不明な点があると思われますがご了承下さい。 プノンペン市内の病院 Calmette Hospital: Monivong Blvd.(国立総合病院):TEL 023-427792 総合診療 The National Maternal & Child Health Center: St.61 国立母子健康センター International Medical Center: #83 Mao Tse Toung Blvd. TEL 015-912765 European Dental Clinic: #195A Norodom Blvd. TEL 018-812055 歯科診療所 Kanthabopha Children Hospital: St.61 小児科(15歳以下)専門病院 プ−サット州 PURSAT(プーサット)州立病院: 総合診療 先進国の援助で設備は比較的良い。 パッタンバン州 BUTTAM BANG(パッタンバン)州立病院: 総合診療 院長が英語で対応できる。 シエムリ−プ州 SIEM RIEP(シエムリ-プ)州立病院: 総合病院 バンティミアチェイ州 BENTEAY MEANCHEY(バンティミアチェイ)州立病院: 総合診療 参 考  在カンボジア日本大使館: Ambassade du Japon,No.75, Moha Vithei Preah Norodom, Sangkat Phsar Thmey 3, Khan Don Penh, Phnom Penh, Cambodia.TEL (855−23)217161〜4  http://www.bigpond.com.kh/users/eojc/ (日) 2 帰ってからの過ごし方  帰国して最初に受けるのは検疫です。滞在先で下痢、腹痛、発熱など体に異常があれば健康相談室で相談してください。赤痢やコレラでも軽い症状ですんでしまうことがありますが、感染力は思ったより強いので、自分で大丈夫と思っていても家族や会社の人に感染することもありますので・・・・。 また、潜伏期間といって感染してから一定の期間たたないと発病しない病気が数多くあります。検疫時は何ともなかったのに数日してから症状が出ることがあり、その時(症状が出た時)には、速やかに医師の診察を受けましょう。診察を受ける際には滞在した国と期間、蚊やノミ、ダニに刺されていたらそのことや、食べたものについても説明されると診断の役に立ちます。 帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001