ミ ャ ン マ ー 1 感染症の流行状況  ミャンマーでは、コレラ、赤痢、腸チフスや肝炎などがよくみられます。マラリア、デング熱、日本脳炎など蚊によって感染する病気も発生します。  ミャンマーでは次のような病気がみられます 食べ物・水から感染する病気 ○腸チフス、パラチフス ○A型・E型肝炎 ○コレラ、赤痢 ○食中毒 ○寄生虫疾患   虫が媒介する病気 ○マラリア ○デング熱 ○日本脳炎 ○ペスト ○リーシュマニア症 ○フィラリア症 その他の疾患 ○破傷風 ○B型肝炎 ○狂犬病 ○エイズ  消化器系疾患(A型肝炎を含む)については、2〜10月の高温多湿の時期(夏季・雨季)に特に多発しており、ほぼ一年中流行しています。熱帯・亜熱帯地域特有の病気であるマラリアは、ほぼ全域で流行しており、特にタイとの国境付近では濃厚流行地域になっています。同じように蚊によって感染するデング熱は都市部でも発生しており、農村部では多発する傾向にあります。流行時期は、ほぼ一年中ですが、雨季(5〜10月)に多いようです。また、結核、破傷風、狂犬病およびエイズなどの性病は季節に関わらず発生している状況です。その他、日本ではあまり聞かれなくなったハンセン病や寄生虫疾患も流行している模様ですので注意が必要です。 ◎1999年、全国の空港検疫所でミャンマーから帰国した旅行者3名から赤痢菌、13名から食中毒菌が検出されています。また、2000年の感染症発生動向調査によると国内でミヤンマーから帰国した旅行者からコレラ患者1名、腸チフス患者1名、三日熱マラリア患者1名が報告されています(国立感染症研究所:感染症週報より)。 2 ミャンマーでの病気の予防方法  ミャンマーの衛生状態は決して良いとは言えません。観光目的で短期間滞在する場合には、コレラや赤痢、A型肝炎、食中毒などの消化器系疾患は、体調を整えることでもある程度病気予防が可能です。蚊によって感染するデング熱とマラリアは蚊に刺されないように注意することで感染を防げます。一方、長期間滞在する場合や都市以外の地域に行く場合には、健康に充分注意していても様々な病気に感染する危険性が高いと考えてください。旅行に出かけると、疲れや飲み過ぎ、食べ過ぎで知らない間に抵抗力が落ちてしまい、このような場合、病原体が入ると簡単に病気になってしまいます。  そこで病気を予防する上で注意が必要な食べ物と行動を紹介します。 1. 注意したい食べ物 ◎生 野 菜: レストランなどで出されるものでも油断できません。蠅がたかっているようなものは避けてください。赤痢、食中毒はもちろんのこと、肥料に人糞を使っている所が多いので寄生虫に感染する心配があります。 ◎ 果実とジュース : カットされて出される果物はホテルやレストランでも避けるのが無難です(丸ごと自分でむいた果実は大丈夫)。また、屋台などで切り売りされている果物やジュースはやめましょう。 ◎生 も の: 刺身・生カキなど生の魚介類はレストラン、ホテルであってもコレラや食中毒菌に感染する危険があります。川魚も多く食べる国ですが、良く調理しないと寄生虫やコレラ、赤痢の心配があります。 ◎生 水・氷: ヤンゴンでは、水道設備は一応ありますが、半数は井戸水を利用しており、病原菌や肝炎ウイルスに汚染されていることが多いため、飲用は避けてください。水が飲みたい場合はミネラルウォーターやボイルドウォーターを注文してください。また、氷は生水から作られることが多いのでなるべく取らないこと。ウィスキーなどと一緒でも消毒効果はありません。 * 注意したいこと ◎毒蛇に注意: ゴルフ場や庭先でマムシに似たバイパーと呼ばれる毒蛇やコブラが普通に見られます。毒が強く命に関わるために充分に注意して下さい。 3 予防接種  旅行経路(出発国)によっては、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病などの予防接種が勧められます。予防接種は、これまでの予防接種歴、滞在期間、旅行形態、出発までの期間でかわりますので、詳しいことはお近くの検疫所に問い合わせてください。 4 マラリア情報(WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 2001) 熱帯熱マラリアが、以下の地域で、通常は標高1000m以下に存在しています。 (1)Karen州では年中 (2)Chin, Kachin, Kayah, Mon, Rakhine, Shanの各州。Pegu 区, Yangon区(以前のRangoon) のHlegu 街、Hmawbi街、Taikkyi 街では3 月から12月にかけて。 (3)Tenasserim 区の非都市部では4 月から12月にかけて。 (4)Irrawaddy 区, Mandalay 区 の非都市部では5 月から12月にかけて。 (5) Magwe 区 , Sagaing区の非都市部で は6月から11月にかけて(1)〜(5)のそれぞれは、標高1,000m以下の地域に存在しています。クロロキン(Chloroquine)やスルファドキシン・ピリメサミン(Sulfadoxine・pyrimethamine)の予防薬が効かない熱帯熱マラリアや、クロロキン(Chloroquine)が効かない三日熱マラリアの報告もあります。予防薬としてはメフロキン(Mefloquine)の服用が有効ですが、服用については副作用などに注意が必要です。 メフロキン/商品名:ラリアン(Lariam)、メファキン(Mephaquin)など。 海外保健医療情報 1 病気になった時 (1)処置  ミャンマ−では衛生状態が思わしくないため、コレラ、赤痢、食中毒などの消化器系の感染症をはじめ、熱帯・亜熱帯地域に特有なマラリア、デング熱やA型肝炎の流行が見られます。  その他にも、破傷風、ハンセン病(癩病)、寄生虫疾患などの発生もあり、抗生剤の乱用などの素人療法で逆に治療が遅れ、取り返しがつかなくなる危険があります。一時的に日本より持参した市販薬を使用するのは差し支えありませんが、体調に異常がある方は速やかに現地の病院を受診してください。 (2)ミャンマ−国内の医療機関  ミャンマ−には700近い国営病院がありますが、医療機関の設備、医師、看護婦のレベルとも日本と比べると大きな隔たりがあります。そのため簡単な応急処置のような治療は可能ですが、医薬品や医療機材が不足しているために完全な治療は望めません。このような状況ですので、ミャンマ−では病院を受診することのないように健康には充分に注意してください。簡単な手術(虫垂炎、外傷など)であればミャンマ−でも可能ですが、緊急を要する疾患や重症疾患では近隣の医療先進国(タイ、マレ−シア、シンガポ−ルなど)に移送しなければなりません。この際の移送費は個人負担になる場合が多いので、できれば海外旅行傷害保険に加入したほうが良いでしょう。  社会主義国ですので医療費に関しては原則として無料ですが、外国人観光客に関しては、この優遇措置は多分適用されないと思われます。  原則として外国人旅行者は一般の国立病院(国営病院)は利用できません。外国人旅行者には専用の病院があり、その病院で手に負えない場合、他の専門病院を紹介するシステムを採っています。また、一般開業医(個人医)も利用することができます。  薬は国内の製造が間に合わず、売られている薬のほとんどは近隣の国から輸入あるいは密輸されたものです。そのため自由に購入はできますが品質や有効期限などはまったく当てになりません。薬はやはり、日本から持参することをお勧めします。  以下、日本人旅行者や在外邦人が利用しやすい病院を紹介します。 ヤンゴン  外国人専用クリニック KANDAWGYI Clinic (カンドジー・クリニック): 総合診療(TEL 550149/550319) 入院可住所:Kyaikasan Road  一般開業医 Pacific Medical Center: 全科 (TEL 548022) 入院不可住所:No,81 Kaba Aye Pagoda Rd. Bahosi Medical Center: 一般(TEL 224667,224548) 24時間サービス住所:B-31/36,Bahosi AEA Clinic: (TEL 667879,667877)lnya Lake Hotel内夜間の緊急時に便利  総合病院(以下の病院はKANDAWGYI Clinicからの紹介状がないと受診出来ません) YANGON General Hospital: 総合診療 (TEL 281722/281440) 入院可住所: Bogyke Aung San St. NEW YANGON General Hospital: 総合診療 (TEL 283022/283097/283098)入院可 住所: Bogyke Aung San St.(JICA病院)   参 考 在ミャンマ−日本大使館: Embassy of Japan,No.100, Natmauk Road, Bahan Township,Yangon, the Union of Myanmar. (P.O.Box 841) TEL (95-1)549644 〜8 各管区警察 バハン地区警察 TEL 50630   カマユ地区警察 TEL 30304   マヤンゴン地区警察 TEL 60352   サンジャイン地区警察 TEL 31184 2 帰ってからの過ごし方  帰国して最初に受けるのは検疫です。滞在先で下痢、腹痛、発熱など体に異常があれば健康相談室で相談してください。赤痢やコレラでも軽い症状ですんでしまうことがありますが、感染力は思ったより強いので、自分で大丈夫と思っていても家族や会社の人に感染することもありますので・・・・。  また、潜伏期間といって感染してから一定の期間たたないと発病しない病気が数多くあります。検疫時は何ともなかったのに数日してから症状が出ることがあり、その時(症状が出た時)には、速やかに医師の診察を受けましょう。診察を受ける際には滞在した国と期間、蚊やノミ、ダニに刺されていたらそのことや、食べたものについても説明されると診断の役に立ちます。 帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001