ラ  オ  ス 1 感染症の流行状況  ラオスでは、コレラ、赤痢、腸チフスや肝炎などがよくみられます。マラリア、デング熱、日本脳炎など蚊によって感染する病気も発生します。  ラオスでは次のような病気がみられます。 食べ物・水から感染する病気 ○腸チフス、パラチフス ○A型・E型肝炎 ○コレラ、赤痢 ○食中毒 ○寄生虫疾患 虫が媒介する病気 ○マラリア ○デング熱 ○日本脳炎 ○フィラリア症 ○リーシュマニア症 その他の疾患 ○B型肝炎 ○狂犬病 ○エイズ ○破傷風    消化器系疾患については、5〜10月の高温多湿の時期(雨季)に多く発生しており、熱帯・亜熱帯地域特有の病気であるマラリアの流行は都市部や高原、山岳部ではまれですが、丘陵、低山岳地帯や南部平野地帯では逆に非常に多くなっています。同じように蚊によって感染するデング熱は都市でも発生しますが、特に地方の発生が多く、ほぼ一年中流行しています。また、破傷風、肝炎、エイズを含む性病は季節にかかわらず発生している状況です。その他、日本ではあまり聞かれなくなったハンセン病や、最近報告されたメコン住血吸虫もメコン川流域で報告されています。 ◎1999年、全国の空港検疫所でラオスから帰国した旅行者9名から食中毒菌が検出されています。また、2000年の感染症発生動向調査によると国内でラオスから帰国した旅行者からデング熱患者1名が報告されています(国立感染症研究所:感染症週報より)。 2 ラオスでの病気の予防方法  都市部に滞在している場合には、感染の危険性のあるのはコレラや赤痢あるいは食中毒などの消化器系疾患とデング熱ですが、消化器系疾患は体調を整えておくだけで、ある程度病気予防は可能です。デング熱は蚊に刺されなければ感染しません。旅行に出かけると、疲れや飲み過ぎ、食べ過ぎで知らない間に抵抗力が落ちてしまい、このような場合、病原体が入ると簡単に病気になってしまいます。  そこで病気を予防する上で注意が必要な食べ物と行動を紹介します。 注意したい食べ物 ◎生 野 菜: 市場や屋台で蠅がたかっているようなものは避けてください。赤痢、食中毒、寄生虫の心配があります。(肥料に人糞を使っている所が多い)。 ◎果実とジュース: 屋台などで切り売りされている果物(丸ごと自分でむいた果物は大丈夫)やジュースは避けましょう。 ◎生 も の: 海に面していないために海産物はほとんどタイからの輸入で、鮮度が悪いため一般に刺身などでは食べることはありません。レストランや高級ホテルであっても刺身・生ガキなどの生ものを食べるのは、コレラや食中毒菌に感染する危険があります。また、川魚を主に食べますが、良く調理しないと寄生虫などに感染する心配があります。 ◎生 水・氷: 大都市では水道の設備は一応あり、水質も悪くありませんが水道管などが古く、送水途中の汚染が多いため病原菌や肝炎ウイルスに汚染されることがありますので、生水は避けてください。地方では、溜め水に頼っている所が多いので、より注意が必要です。水を飲む場合はミネラルウォーターやボイルドウォーターを注文してください。また、氷は生水から作られることが多いのでなるべく取らないこと。ウィスキーなどと一緒でも消毒効果はありません。 * 注意したいこと ◎水 遊 び: メコン川流域には非常に怖いメコン住血吸虫がいます。この寄生虫は皮膚から侵入するために感染するときには皮膚炎が見られることが特徴で、感染が進行すると消化器や肝臓あるいは脾臓に重大な障害を与え、死に至らしめるために非常に恐れられています。この他、破傷風や他の寄生虫にも感染する危険がありますので、裸足にはならないように注意してください。 3 予防接種  旅行経路(出発国)によっては、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また、一般にA型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病などの予防接種が勧められます。予防接種は、これまでの予防接種歴、滞在期間、旅行形態、出発までの期間でかわりますので、詳しいことはお近くの検疫所に問い合わせてください。 4 マラリア情報(WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 2001) 熱帯熱マラリアが、首都ビエンチャンを除く全土に年間を通して存在しています。予防薬としては、メフロキン(Mefloquine)/商品名:ラリアン(Lariam)、メファキン(Mephaquin)の服用が有効ですが、服用については副作用などに注意が必要です。 海外保健医療情報 1 病気になった時 (1)処置  ラオスの衛生状態はあまり良くないのが現状です。そのため地域によっては、コレラ、赤痢、食中毒、アメ−バ赤痢などの消化器系感染症やA型肝炎などの流行が見られます。この他にも熱帯・亜熱帯地域に特有なマラリアやデング熱、そして日本ではほとんど見られなくなった狂犬病なども発生しています。  そのため、感染症が多い地域を旅行する方は注意が必要です。日本にない病気もあり、抗生剤の乱用などの素人療法で逆に治療が遅れ、取り返しがつかなくなる危険があります。一時的に日本より持参した市販薬を使用するのは差し支えありませんが、体調に異常がある方は速やかに現地の病院を受診してください。 (2)ラオス国内の医療機関  ラオスには国立病院(Central Management Hospital) 8 ヶ所、県立病院(Provincial)17ヶ所、郡病院(District Hospital)115ヶ所、診療所(Central Dispensaries)937ヶ所の計1,077ヶ所があり、首都であるビエンチャンには、国内で最大規模を誇る国立病院がありますが、設備も不十分で医療水準も決して高くはありません。他の病院も同様に、全く整備されていないのが現状です。一般に簡単な応急処置のような治療は可能ですが、医薬品や医療機材が不足がちなために完全な治療は望めません。  慢性的な医薬品不足のため、病院に入院した患者が病院外の薬局で購入した薬を医師に投薬してもらうことも珍しくはありません。  緊急を要する疾患や重症疾患では近隣の医療先進国(タイ、マレ−シア、シンガポ−ルなど)に移送しなければなりません。この際の移送費は個人負担になる場合が多いので、出来れば海外旅行傷害保険に加入したほうが良いでしょう。  医療費については、以前は無料でしたが現在は低額ながら有料になっています。一般に外国人に対する特別な優遇措置はありませんので、若干高額になることもあるようです。  以下、日本人旅行者が利用しやすい病院を紹介します。 ビエンチャン [総合病院] マホソット病院(国立総合病院): (TEL 214018)外国人専用クリニック 住所:マホソット通り [クリニック] インターナショナル・クリニック: (TEL 214002)外国人専用クリニック 住所:マホソット病院内 *狂犬病ワクチン: 国立衛生疫学研究所で受けられる。 (National Institute of Hygiene & Epidemiology) 参 考 在ラオス日本大使館: Embassy of Japan,Road Sisangvone, Vientiane, Lao People's Democratic Republic. TEL(856−21)41-4400〜03 各管区警察 チャンタブリー警察 TEL 212718 交通警察 TEL 312401 サイセター警察 TEL 412456 交通事故緊急連絡 TEL 413720 スィコタボン警察 TEL 215590 犯罪緊急連絡 TEL 212706 スィサッタナー警察 TEL 212711     2 帰ってからの過ごし方  帰国して最初に受けるのは検疫です。滞在先で下痢、腹痛、発熱など体に異常があれば健康相談室で相談してください。赤痢やコレラでも軽い症状ですんでしまうことがありますが、感染力は思ったより強いので、自分で大丈夫と思っていても家族や会社の人に感染することもありますので・・・・。  また、潜伏期間といって感染してから一定の期間たたないと発病しない病気が数多くあります。検疫時は何ともなかったのに数日してから症状が出ることがあり、その時(症状が出た時)には、速やかに医師の診察を受けましょう。診察を受ける際には滞在した国と期間、蚊やノミ、ダニに刺されていたらそのことや、食べたものについても説明されると診断の役に立ちます。  帰国時に体に異常があればお気軽に検疫所へ相談してください。 厚生労働省 検疫所 2001