[Mr.I のピッツバーグ紀行]

[第3話]
 一般的に、技術系の会社の研究部門の使命(?)のひとつに、「どの会社もつくってないような、技術的に新しい製品をつくる」ということがあります。
私の仕事は一言でいえば「コンピューターのプログラムをつくること」なのですが、研究部門でプログラムをつくる目標の中には、
「ある問題に対して世界一早いプログラムをつくる」
「ある問題に対して世界一いい回答を出すプログラムをつくる」
などということがあり得ます。
 その目標を達成するためには、プログラムの書き方(?)を基本的な部分にさかのぼって考え直す必要がでてきます。
それを実現するために、企業の研究部門が大学などと共同で仕事をする機会が生じるわけです。
(大学側は、それに乗じて企業から資金をもらったりするわけです。)
 私の職場のグループでは、私の職場を退職してカーネギーメロン大学の教授になった先輩がいて、その先輩の研究室とは数年間にわたって共同で仕事をしております。
そのような恵まれたコネにより、私はいまアメリカにいるというわけです。

 どんなプログラムを書いているかといいますと、コンピューターで画面に絵を描く技術、「コンピュータ・グラフィックス」という技術に関するプログラムを書いてます。コンピュータ・グラフィックスというと、多くの方はゲームとか映画などのエンターティメント的なものを想像しますが、私はもっと地味な仕事にかかわってます。
 たとえば、自動車会社や建築会社に勤めている方はご存知かと思いますが、いま自動車や建築の設計は、紙に図面を書くよりコンピューターの画面上で図面を書くほうが多くなってます。また、それを製作する前に、必ずといっていいほど、安全性とか強度などをコンピューター上で計算するという作業が入ります。
 この設計や計算をしている途中に、コンピューターの画面上では高度な技術をつかって図面や計算結果を表示してます。このような場面にもコンピュータ・グラフィックスが使われていて、私はそのプログラムに関する新しい技術をつくるために大学に来てます。

 大学では「設計」という業界は機械工学科に属することが多いです。よって、私の通っている研究室も、コンピューターの研究室であるにもかかわらず、機械工学科に所属しております。
 大学では授業はまったくとってません。朝から晩まで、数人の学生と一緒に研究室に入り浸って、プログラムを書いたり専門書を読んでいます。はっきりいって見かけ上は、私の職場での過ごし方と大差ありません。ただ、大学には書物が非常に多く、周囲も勉強の出来る人がそろっていて、英語も私より話せる人ばかり(そりゃ当然ですが)なので、いろんな意味で、いい刺激になってます。

 日本人の教授の周りにはアジア人が集まる傾向があるようで、私の通っている研究室の学生は圧倒的に中国人とインド人が多いです。みんなクチグチに
「日本で食べる中華料理は変だ」
「日本のカレーは違う」などというようなことを言ってます。

 帰国する際には、職場から何らかの成果を期待されています。そのときまでには、いばって持ち帰れるような性能のいいプログラムが完成しているように頑張らねば、と思っております。

 次回は、私の趣味についてです。

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