5 疑冠?拡張剤〜狭心症
1989年5月15日号(No.43)に掲載
ニトログリセリンに代表される硝酸剤「いわゆる冠拡張剤」は、心臓の冠動脈を拡張することによって、狭心症に奏効すると思われていました。
しかし最近では、冠拡張作用よりも静脈の拡張作用の方が注目されています。
静脈の拡張による心臓の前負担の減少、心容量の減少による心筋酸素消費量の量の減少が、「いわゆる冠拡張剤」の主な作用であると考えられるように成ってきました。もっと分かりやすく言うと、静脈が拡張すると、心臓に帰ってくる血液の量が少なくなります。ですから心臓が送り出す血液の量も減り、心臓の仕事が楽になり、心臓が必要とする酸素の量も減るのです。供給される酸素の量が少なくても心臓はその少な
い酸素で何とかやっていける状態になるのです。
狭心症は、心臓に栄養や酸素を運ぶ冠動脈の障害(狭くなったり、詰まったり)が原因となって起こります。狭心症の患者では、生体側のシステムとして冠動脈を最大限にまで拡張するように指令が出ています。それでもなおかつ酸素不足の状態となり、虚血状態が生じてしまったのです。そのような状態では、さらに冠動脈を拡張するなど元々無理なことなのです。
β遮断剤が狭心症の治療に用いられるのも、心臓の働きを抑え、心臓の酸素消費量を抑えるためです。
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