8 「カルシウム拮抗剤って何なのさ?」
1992年3月1日号(No.103)に掲載したものです。
カルシウム拮抗剤は、循環器系の疾患では主役の位置を占めるほど、数多く処方されます。ところでカルシウムに拮抗(さからうとか、競争するとか言う意味です)するというのはどういうことなのでしょう?、カルシウムにさからってどうするのしょうか?
「骨や、歯に影響はないのだろうか?」「カルシウムの錠剤と一緒に飲んでも大丈夫なんでしょうか?」などとの疑問がわくのも当然です。
実はこれは、カルシウム拮抗剤という名前が誤解を招いているのです。
英語では、Calcium channel antagonistsと呼んでいます。これを直訳すれば、カルシウム・チャンネル拮抗剤、すなわちカルシウムの拮抗剤ではなく、カルシウムのチャンネルの拮抗剤と呼ぶのが正しいのです。
チャンネルといえば、まず家庭のテレビのチャンネルを連想しますが、そのチャンネルのことです。最近のテレビではタッチパネル方式で触れるだけでチャンネルが切り替わるものがあります。カルシウムも触るだけで、色々な作用を現します。(触媒作用と言います)。英語辞書を引いてみると、チャンネルには「通り道」の意味もあります。
カルシウムが特定の通り道を通過することで、電気的な変化が起こり血管が収縮するなどの変化が起こります。ですからこのカルシウムの通り道をふさぐと、血管などの平滑筋(運動に使うのは骨格筋の方です)は収縮することが出来ず血管は広がったなります。
血管が広くなると、血液は流れやすくなり、血圧はさがります。心臓の負担も軽くなります。今まで狭かった道が、拡張工事で道が広くなると交通渋滞が解消することを思えばこの理屈はわかりますね。
ですから、カルシウム拮抗剤(正確にはカルシウム・チャンネル拮抗剤)は、高血圧症、狭心症、不整脈の治療剤として有効なのです。脳の血管をも拡張するものは脳循環改善剤としても使われています。
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