10 βラクタム環

1992年5月15日号(No.107)に掲載したものです。

現在、抗生物質の中で最も多く使用されているのは、βラクタム系です。
これらの薬剤は、その構造式の中にβラクタム環を持っています。
βラクタム環自体は四角形です。そしてそのβラクタム環の横に五角形のついたものが、ペニシリン系で、六角形のついたものがセフェム系です。
(その他、αラクタム環〜三角形、γラクタム環〜四角形というのもありますが薬剤としては使用されていません。)

実は、この四角形がペニシリン系やセフェム系の作用点なのです。この四角形が、細菌に取り込まれ、細胞の外側の壁が出来るのをじゃまするのです。このため菌は裸の状態となり少しの刺激ですぐに死んでしまいます。

これらβラクタム系の抗生物質が数多く使用される理由の一つには、他系統の抗生物質に比べて副作用が少ないことが挙げられます。その理由はこれらの抗生物質の作用点が先ほど述べたように細胞壁の合成阻害だからです。細胞壁は細胞にとって重要なバリヤー機構です。そしてこの細胞壁は人間などの高等動物の細胞にはありません。だからβラクタム系の薬物を飲んでも人間の細胞はダメージを受ける場所がなく、細菌だけがダメージを受け死んでしまうというわけです。

ただ、これらの抗生物質はショックを起こすことが多く、必ず使う前に問診をし、また注射剤では皮内テストを行うことが必須となります。


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