15 「利尿剤」〜Naは水なり〜

1994年4月15日号(No.150)に掲載

利尿剤は、比較的よく使われる薬なので、もっと早くにこのシリーズで取り上げるつもりでした。しかし、この利尿剤の薬理と言うのは、難しいので後回しにしていました。そして勉強してみるとこれが大変なのです。

まず利尿の仕組みを知るためには、Naポンプ、H+と逆方向に移動するNaの能動輸送、共輸送、逆向流交換系、単純拡散、促進輸送、単体輸送、チャンネル輸送、浸透圧勾配などを理解しなくてはなりません。正直に白状しますが、筆者はいまだによく分かっていないのです。筆者の知っていることは次のようなことだけです。

薬理学の本には、利尿剤の作用はナトリウム(Na)の再吸収抑制(つまり塩分を体外に出すと言うことでしょう)とされています。これはNaが潮解性を持つことから容易に理解できます。塩(Na)には、水を引き込む力があるのです。ナメクジに塩をかけると溶ける(ように見える)のもこの理屈です。
塩(Na)が出て行けば水(尿)もいっしょに出て行くのです。

あまりにも幼稚な説明になってしまいましたが、どの薬理学の本を見ても「利尿剤の作用は、種々の観点から追求されているが不明な点が多く残されている。」と書かれています。世界的な学者でも十分な説明が出来ないのなら筆者などの頭脳では、分からないはずです。

利尿剤の副作用として知っておかなければならないこととして、K(カリウム)の欠乏があります。すなわち、フルイトランやラシックスなどではKは体外に出て行きますが、この理由もよくわかっていません。おそらく、Na利尿作用によりアルドステロン分泌が高まり、これがKの排泄を増加させるためだとされています。

また、ダイアモックスなどの炭酸脱水酵素抑制剤なども低K血症になります。ししてアルダクトンAなどの抗アルドステロン剤では逆にKが蓄積していくのです。


上記の文章をダウンロードされる方は、下の画像をクリックして下さい。

   DOC形式   TEXT形式   HTML形式

戻る